問屋経由と広州直接仕入れ、どちらが安いか – 1枚あたりの実額で比べる
日本のセレクトショップやECサイトに並ぶ服のタグを裏返すと、多くに「Made in China」とある。日本繊維輸入組合の統計では、2024年に日本へ輸入された衣料品のうち、数量ベースで約55%が中国製だ。
その中国製アパレルの上流をたどると、広州に行き着くことが多い。すべてが広州だと断定はできない。それでも、広州とその周辺には巨大な卸売市場と無数の縫製工場が集積していて、日本の問屋が扱う商品と同じものが市場の棚に並んでいる光景は珍しくない。
つまり、あなたが問屋から仕入れている商品の「さらに上流」は、広州の市場かもしれない。では、問屋を飛ばして直接仕入れれば安くなるのか。
答えは「商品による」だ。そして、それを商品ごとに見分ける計算方法がある。
「マージン何倍」では比べられない
「問屋は市場価格の何倍で卸している」という倍率の話は、分かりやすいぶん危うい。問屋の仕入れルートも掛け率も外からは見えないし、商品によってばらつきが大きい。倍率の一般論を信じて「直接仕入れはお得」と判断すると、計算が狂う。
比べ方はもっと単純でいい。いま問屋に払っている1枚あたりの価格と、直接仕入れした場合の1枚あたりの総コスト。この2つの実額を、商品ごとに並べる。それだけだ。
問題は、後者の「直接仕入れの総コスト」をどう見積もるかにある。
直接仕入れの総コストは「市場価格×1.5〜1.7」で読む
広州市場からの直接仕入れでは、商品代金のほかに、代行手数料・ネーム付け替え・検品代・国際送料・関税/消費税・為替手数料がかかる。すべて足すと、日本に届いた時点の総コスト(ランディングコスト)は、商品代金のおおむね1.5〜1.7倍になる。
内訳はこうだ(2026年6月時点)。
- 現地市場型の代行手数料が商品代金の15〜20%
- 検品・ネーム付け替え・下げ札・OPP包装(透明フィルムの個包装)が1枚3元(約70円)
- 船便が12〜13元(約300円)/kg前後で、Tシャツなら50kgで約200枚
- 関税と消費税が、課税価格(商品代金+国際送料+保険料)の約21%(関税9〜11%+消費税10%)
- 為替手数料が振込日のTTS(銀行の対顧客電信売相場)×1.03
単価が低く、量が少ないほど、1枚あたりの固定費の比重が増えて倍率は上振れする。各費目の詳しい解説はコスト内訳の記事に、利益率の計算例は費用と利益率のシミュレーションにまとめている。
この1.5〜1.7倍を起点にすれば、判断は一行で書ける。
市場価格×1.5〜1.7が、いまの問屋価格を下回るなら、直接仕入れはコスト面で勝つ。上回るなら、その商品は問屋経由のままでいい。
問屋が存在する合理的な理由
直接仕入れのほうが安くなる商品があるのなら、なぜ全員が切り替えないのか。答えは、直接仕入れには問屋が引き受けていたコストとリスクが移転するからだ。
言語と商習慣の壁。 広州市場での取引は基本的に中国語だ。価格交渉、品質の確認、トラブル時の対応。いずれも自力か、中国語ができる仲介者を通じて行う必要がある。
検品と品質管理。 問屋は一定の品質基準を通過した商品だけを日本に入れている(少なくとも、まともな問屋であれば)。直接仕入れの場合、この検品を自分で行うか、現地のバイヤー(買付代行)に委託する必要がある。
物流と通関。 中国から日本への国際輸送、通関手続き、関税の計算。これらを問屋に任せていた事業者が、直接仕入れに切り替えると自分で対応するか、代行業者を通す必要がある。
在庫リスク。 問屋は多品種の在庫を抱え、小口で販売することでリスクを分散している。直接仕入れでは、自分が在庫リスクを引き受ける。
問屋の価格には、これらのコストとリスクの対価が含まれている。問屋を通すこと自体が「ぼったくり」なのではない。だからこそ、感情ではなく実額で比べる必要がある。
規模が大きいほど、直接仕入れは安くなる
直接仕入れのコストには、規模で下がる部分がある。
代行手数料は月間仕入額に応じた逓減制(仕入額が増えるほど料率が下がる仕組み)が一般的だ(2026年6月時点)。月100万円以下なら20%、100万〜200万円で18%、200万〜300万円で15%、という階段型の料金体系になっている。送料も、500kgを超えると単価が一段下がる。一方、検品代は1枚3元の固定だ。
つまり「直接仕入れが安くなる分岐点」は一律ではない。商品単価と月間仕入額の組み合わせで動く。だからこそ、倍率の一般論ではなく、自分の数字で1枚あたりの実額を計算する必要がある。
もうひとつの変数 – 不良率
規模と並んで利益率を左右するのが、不良率だ。
仮に100万円分仕入れて、1割が不良だったとする。売れるのは良品90万円分。支払いは100万円。良品1枚あたりの実質仕入単価は、1割増えている。不良が出るほど、買付単価は静かに膨らむ。これは「安い仕入先を見つける」のと同じくらい、「不良を出荷前に弾ける体制」が利益率に効くということだ。
中国アパレルの不良率は、仕入先や検品体制によって大きく変わる。取引先の選別をしていない一般的な仕入れでは3〜5%程度、タオバオやアリババから無選別で仕入れればそれ以上になることも珍しくない。取引実績のある店舗を選んで仕入れ、出荷前に検品を行う体制であれば、弾く割合は1.5%未満に収まる。検品なしで仕入れれば、その不良はそのまま日本に届き、クレームと返品になって後から請求書を寄こす。
検品の基準を持ち、出荷前に不良品を止められるバイヤーがいるかどうか。直接仕入れの利益率は、この一点で大きく変わる(何を弾き、何を許容するかの基準は検品の解説記事で詳しくまとめている)。
コストの先にあるもの – 商品の選択肢
問屋を省けばコストが下がる。そうなる商品は確かにある。それでも、直接仕入れの本当のメリットはコストだけではない。
広州市場には、問屋に流通していない商品が大量にある。市場の店舗がオンラインに載せず、来店したバイヤーにしか売らないケースは珍しくない。問屋は自社の取引先(市場内の特定の店舗や工場)から仕入れるため、市場全体の商品にアクセスしているわけではない。
つまり、直接仕入れに切り替えることで、コストだけでなく商品の選択肢が広がる。他のEC事業者が問屋経由で同じ商品を仕入れている中で、自分だけが市場から直接仕入れた独自のデザインを持っている。その差が、価格競争から抜け出す足がかりになる(商品が被る構造と市場にしかないデザインについてはそれぞれ別記事で解説している)。
よくある質問
Q. 問屋価格と直接仕入れのコストは、具体的にどう比較すればいいですか?
比較したい商品の現地市場価格(バイヤーに確認できます)に1.5〜1.7を掛け、いま問屋に払っている1枚あたりの価格と並べてください。市場価格×1.5〜1.7のほうが安ければ、コスト面では直接仕入れが有利です。単価や数量によって倍率は変わるため、正確な金額は商品と数量が決まった段階の見積もりで確認することをおすすめします。手数料・検品代・送料の目安は料金ページでご確認いただけます。
Q. 広州市場から直接仕入れるには、自分で渡航する必要がありますか?
初回は視察をおすすめしますが、必須ではありません。現地バイヤー(買付代行)を通じてリモートで仕入れる方法があります。バイヤーが市場を巡回し、商品の写真や動画を共有してくれるため、日本にいながら仕入れを回すことが可能です。
Q. 問屋からの仕入れと直接仕入れを併用できますか?
できます。むしろ、最初は併用をおすすめします。問屋で安定した売上を維持しながら、直接仕入れを少量から試すことで、品質や物流のリスクを抑えつつ段階的に移行できます。広州市場は1色1サイズあたり5枚から仕入れられるため、お試しのハードルは高くありません。


