広州市場への初回視察ガイド – エリア別の歩き方と持ち物リスト
広州のアパレル市場を初めて歩く日は、楽しいが、とにかく疲れる。
数百の店舗がひしめくビルが何棟もあり、それが沙河、十三行、白馬と複数のエリアに分かれている。全部を1日で見て回ることは物理的に不可能だ。だから、行く前に「何を見たいか」「何のために行くか」を明確にしておく必要がある。
この記事では、広州市場の初回視察で知っておくべき実務情報を、エリア別の特徴から持ち物、食事、通信手段まで一気に整理する。
3泊4日でも市場は実質2日
広州視察に来る人の多くは3泊4日の日程を組む。しかし、市場を回れるのは実質2日だ。
羽田から広州白雲国際空港までの直行便で約4時間半〜5時間半。空港から市内中心部まではスムーズにいけば40分程度だが、市内の渋滞に巻き込まれると1時間以上かかる。沙河エリアの周辺は特に渋滞がひどく、途中でタクシーを降ろされることもある。空港からの行き先によっては、タクシーに断られるケースすらある。
初日は移動で半日が消え、最終日も空港への移動があるから朝しか動けない。つまり、丸1日使えるのは中日の2日間。その2日間で何を見て、何を買うかを事前に決めておかないと、あっという間に時間がなくなる。
エリア別:どこに何があるか
広州のアパレル市場は大きく3つのエリアに分かれている。
沙河 – 最も安く、最も速い
天河区の濂泉路を中心にした広州最大級のアパレル流通拠点。南城、金馬、万佳、北城といった大型の卸売ビルが密集し、それぞれに数百から千を超える店舗が入っている。広州の他のエリアの卸売業者でさえ、朝3〜4時に沙河に来て仕入れてから自分の店を開ける。それくらい、ここが仕入れの源流だ。
営業時間は広州で最も早い。早朝3〜4時から取引が始まり、繁忙期は昼の12〜13時頃まで。閑散期は11時頃から閉め始める店も多い。レディース専門の「南城」と「金馬」は朝8時〜午後2時頃が中心。ほとんどの店舗が自社生産・自社販売で、1日に売れる分だけ作るスタイル。気に入った商品に在庫があれば、その場で押さえないと翌日にはない可能性がある。
南城と金馬がレディースの中心。万佳はカジュアルとデニム、北城はメンズが主力。1枚20元台から100元台が主力の価格帯だ。
品質は価格なり。縫製が雑だったり、アイロンをかけずに出荷されているものもある。検品は必須だ。
十三行 – 歴史あるトレンド発信地、ただし転売店に注意
荔湾区の十三行路を中心にした、40年以上の歴史を持つエリア。東南アジア、中東、欧米など世界各地からバイヤーが集まる。
営業時間は朝6時30分〜午後1時30分(1〜3階の小規模ブース)。4階以上のフロアは朝8時〜午後3時頃。午前中が勝負。
中核は「新中国大厦」。総面積15万㎡、4,000超の店舗が入る48階建てのビルだ。1〜3階は小規模ブースが密集し、日韓風・カジュアル系の婦人服が中心。4〜5階はニットや毛織品、6階以上にはファッション性の高い欧韓系の中価格帯婦人服が揃う。
最大の注意点は「転売店」の存在。十三行で卸値60元の商品が、沙河では20元で売られていたというケースがある。先に沙河を回ってから、十三行を補完的に使うのが賢い順番だ。
白馬周辺 – 中〜高級路線
広州駅の南側、站南路・站西路に名前のついたビルだけで10か所以上が密集。ビルの内部は整備されていて空調も効いている。そのぶん価格は高い。
営業時間は朝8時〜午後6時。土日も営業。沙河や十三行のように早朝に行く必要はない。
「白馬服装市場」が代表格。1993年開業、約6万㎡、8フロアの商業スペースを持つ。2〜3階が婦人服(子供服も一部)、4〜5階がオリジナルブランドの婦人服、6〜7階がメンズという構成。中〜高級路線で、品質は沙河より明らかに上。そのぶん単価も数倍になる。
初回視察でやりがちな失敗
広州市場に初めて来た人が陥りやすい失敗がある。
テスト販売を考えていない。 これが最も多い失敗だ。市場を歩くと目移りして、あれもこれもと品番を増やしてしまう。しかし、初回で仕入れるべきなのはテスト販売用の少量だけだ。まずは少量を日本に持ち帰り、ECサイトで市場の反応を見る。売れた商品だけを追加発注する。この順番を最初から頭に入れておかないと、売れない在庫を抱えることになる。
テスト仕入れした商品は、渡航中に航空便を手配すれば、帰国する頃にはサンプルが届いていることも多い。広州→日本の航空便は、早ければ2日、余裕を見て5日。テスト販売のスピード感は、この航空便の活用で一気に上がる。
テスト後のスケジュールを伝えていない。 テスト仕入れの商品を日本に送り、販売結果を確認し、追加発注をかける。この流れのスケジュール感を、広州にいる間にバイヤーに伝えておくとその後がスムーズに進む。「2週間後に追加発注の判断をする」「来月に航空便でサンプルを送ってほしい」など、次のアクションの時間軸を共有しておく。
サイズ確認を省略する。 写真や数字だけでサイズを判断し、試着を省略する人がいる。同じ「Mサイズ」でも、ブランドや工場によって実寸が違う。初回視察では必ずサンプルを試着するか、メジャーで実測する。
写真撮影の現実
広州の市場では、写真撮影の可否は店舗との関係の深さで決まる。
一見の客が撮影を始めると、断られることが多い。デザインをすぐにコピーされることを店側は警戒している。バイヤーが同行していれば話は別で、店側との信頼関係があるから、服を手に持って撮影を手伝ってくれることもある。対応はまるで違う。もちろん店にもよるが、初回視察で自分一人の撮影はハードルが高いと思ったほうがいい。
なお、市場で撮った写真は店内のLEDや蛍光灯の下で撮ったものだ。特に紫系や深い赤は実物と違う色に写りやすい。色味が決め手になる商品は、サンプルを取り寄せて実物で確認するのが鉄則だ。
一日の効率的な回り方
朝8時にはホテルを出る。 沙河のレディース市場(南城・金馬)は8時には開いている。十三行はさらに早い。白馬も8時から。
バイヤーに事前に伝えておく。 見たいもの(レディース/メンズ、カジュアル/高級、価格帯)をあらかじめバイヤーに共有しておく。そうすればバイヤーが最適なビルと回る順番を組んでくれる。
気になったらバイヤーに伝える。 歩いていて別の店舗が気になったら、「あの店も見たい」とバイヤーに言えばいい。ただし、「あの商品、購入するかもしれない」と伝えることが大事。バイヤーは商品の目星がついていると、後で戻ってきたときの交渉がしやすくなる。
全部は回れない覚悟をする。 広州の市場はとにかく広い。バイヤーが案内したい店舗を全部回りきれないことのほうが多い。気になる店に入って、商品を見て、聞いて、書類を書いて、数とサイズを決めて、一つひとつの作業に時間がかかる。頭をフル回転させながら朝8時から夕方まで動いても、1日は一瞬で終わる。「あとで戻ろう」と思っても、同じ店舗にたどり着けなくなることもある。気になった商品があれば、バイヤーに店舗の位置を記録してもらおう。
持ち物リスト
必須:
- スマートフォン+充電器(モバイルバッテリー推奨)
- スニーカー。これは絶対。1日1.5万歩以上を想定する。女性のパンプス、男性の革靴は絶対におすすめしない。足が壊れる。どうしてもビジネスシューズが必要な場面があるなら、別に持っていく
- リュックまたは肩掛けカバン。手で持つカバンでは疲れる。両手が空く状態が理想
- ウェットティッシュ
- 胃薬
事前準備:
- WeChat Payの登録を済ませておく。広州市場の支払いはWeChat PayとAlipayが主流だ。現金が使える店もあるが、使えない店もある。日本にいるうちに登録と設定を完了させておく
- 国際ローミングが使える通信プランを契約しておく。現地でSIMを買う手もあるが、手間がかかるので日本で事前に準備したほうが確実
市場での支払い
市場の店頭での直接購入は、WeChat PayまたはAlipayのQRコード決済が主流だ。現金が使える店もあるが、モバイル決済が前提になっていると思ったほうがいい。
買付代行を使う場合、市場での支払いはバイヤーが行うため、自分が店頭でQRコードを出す場面は基本的にない。外国人のモバイル決済は1回あたり約75万円・年間約750万円の上限があり、手数料も約5%かかるため、事業規模の仕入れには向かない。代行業者への支払い方法は業者によって異なるが、少額ならWeChat PayやAlipay、大きな金額なら銀行振込やWise(ワイズ)などの海外送金サービスが一般的だ。日本の銀行口座から代行業者の日本法人口座に日本円で振り込み、代行業者が中国側で人民元で支払う、という形を取る業者も多い。
初回の取引では原則前払い。信頼関係ができてくると、バイヤーが立て替えて後から入金という流れになることもある。支払い方法の詳細は、利用する代行業者に直接確認してほしい。
食事・移動・通信
食事。 中国の食事は独特の香りがする。八角(スターアニス)や、それをベースにした混合香辛料の五香粉(ウーシャンフェン)が多くの料理に使われている。この香りが苦手な人は少なくない。合わないと思ったら、バイヤーに相談してチェーン店やファストフード(マクドナルドやケンタッキーは広州にもある)で無難な料理を選ぶこと。無理に現地料理を食べて体調を崩すより、確実に食べられるものを選ぶほうが仕事に集中できる。
移動。 市場間の移動はタクシーか車が基本。配車アプリ(滴滴出行 / DiDi)がWeChatと連携しているので便利だ。地下鉄も整備されていて清潔なので機会があれば一度乗ってみるといい。電車内は静かで、ほとんどの人がスマートフォンを見ている。今の中国の日常を肌で感じられる。
通信。 国際ローミング対応の通信プランを日本で契約していくのが最も確実。現地でのWi-Fi環境はホテルやカフェでは問題ないが、市場のビルの中は通信が不安定なこともある。市場で見つけた商品の写真を日本側に送って判断を仰いだり、1688で価格を確認したりと、安定した通信環境は仕事の効率に直結する。
広州市場の初回視察に不安がある方は、現地のバイヤーによる同行案内サービスをご検討ください。市場の構造を知り尽くしたスタッフが、エリア選定から価格交渉、テスト仕入れの手配までサポートします。
よくある質問
Q. 初回視察は何日必要ですか?
3泊4日が標準的ですが、飛行機と空港からの移動で前後1日ずつ消えるため、市場を回れるのは実質2日です。2日ではバイヤーが案内したい店舗を全部回りきれないことも多いので、じっくり仕入れたい場合は5泊以上の日程をおすすめします。最終日は朝しか動けないことも計算に入れてください。
Q. 一人で行っても大丈夫ですか?
物理的には可能ですが、初回はバイヤーの同行を強くおすすめします。言語の壁、店舗の場所の把握、価格交渉、撮影の許可取り。これらをすべて自分でやるのは非効率です。市場に詳しいバイヤーがいないと、闇雲に歩くだけで終わりかねない規模です。初回はバイヤーに案内を頼み、市場の構造を理解してから、2回目以降の訪問計画を立てるのが現実的です。
Q. どのエリアから見るべきですか?
仕入れの目的によります。低価格帯の量販向けなら沙河から。デザイン重視のトレンド商品なら十三行。品質重視の中〜高価格帯なら白馬。バイヤーに事前に商品ジャンルと価格帯を伝えておけば、最適な順番を組んでくれます。
この記事を書いた人: 広州市場での買付代行実績15年のスタッフが在籍する中国トレーディングサポートが、初回視察の実務ノウハウを現場の視点から整理しました。


