中国にはアパレルの卸売市場が都市ごとに何十とある。名前を並べるだけなら誰にでもできる。大事なのは、どの市場に何があって、価格帯はどこで、自分の仕入れ規模に合うのはどれかということだ。
このページでは、広州に15年いる現地スタッフの視点を軸に、中国の主要アパレル卸売市場を都市別にまとめた。実際に足を運んで得た情報と、2026年時点での各市場の動きを反映している。

中国アパレル卸売市場の全体像
中国のアパレル卸売市場は、大きく分けると以下の都市に集中している。
広州が圧倒的に大きく、中国全土の卸売市場の中心にある。他の都市の卸売市場も、元をたどれば広州から仕入れている店が少なくない。杭州はデザイン性の高い女性服に強く、深圳は高級オリジナルブランドの拠点。義烏は日用雑貨が中心で、アパレル単体なら広州・杭州に軍配が上がる。北京はかつて北方最大の集散地だったが、政府の都市再編により市場は事実上なくなった。
都市ごとの特徴を簡単に整理すると、こうなる。
広州は低価格から中高級まで全価格帯をカバーしていて、レディース・メンズ・子供服・生地のすべてが揃う。外国人バイヤーの受け入れ態勢も整っており、最も間口が広い。杭州は中〜高価格帯が中心で、レディースに特に強い。オリジナルデザインの比率が高く、トレンドの発信力がある。深圳は高価格帯に特化していて、レディースのオリジナルブランドが集まる。オンラインに商品を出さない店も多く、現地に行かないと手に入らない商品がある。義烏は低〜中価格帯で、雑貨・小物がメイン。アパレルも扱っているが専門性は広州や杭州には及ばない。東莞・虎門はかつて女性服の名産地だったが、近年は広州に押されて影響力が落ちている。Tシャツや生地の調達先としてはまだ使える。北京はかつての三大市場(動物園・大紅門・雅宝路)がすべて閉鎖または大幅縮小しており、現在はアパレル卸売の拠点としてはほぼ機能していない。
以下、都市ごとに詳しく見ていく。
広州 – 中国最大のアパレル集散地
広州は中国アパレル卸売の中心地であり、規模・品揃え・価格のどれをとっても他の都市を圧倒している。沙河エリアだけでアパレル店舗は2万軒を超える。広州の周辺には製造業の小都市が点在していて、そこで作られた製品が広州の市場に集まり、中国全土と世界各国に流れていく。
近年は店舗オーナー自身がライブ配信で中国国内の消費者に直接販売するスタイルが定着しており、卸売専門だった市場の構造が変わりつつある。ただし物理的な市場自体は健在で、むしろ活況だ。

広州のアパレル市場は大きく4つのエリアに分かれている。それぞれ扱うジャンルと価格帯が違うので、何を仕入れたいかによって行くエリアが変わる。
沙河エリア(天河区) — 広州で最も規模が大きく、最も価格が安いエリア。レディースを中心に、メンズ、カジュアル、デニムまで幅広い。春節を除けば年中混雑していて、中国全土と東南アジアからバイヤーが集まる。主な市場は南城服装城、北城服装城、万佳服装広場、金馬服装城など。
十三行エリア(荔湾区) — トレンド性の高い女性服が中心。新中国大厦と紅遍天ビルが二大拠点で、若者向けのデザインと速い商品回転が特徴。10〜20代向けの商品を探すならここが最も効率がいい。
広州駅周辺エリア(越秀区〜白雲区) — 白馬服装城、紅棉国際時装城、流花服装中心、站西服装城などが集まるエリア。沙河より価格帯がやや高く、品質も一段上。メンズは站西が強い。外国人バイヤーが最も多いのもこのエリア。
中大エリア(海珠区) — 生地・副資材の専門市場。中大国際軽紡城を中心に、布地、裏地、ボタン、ファスナー、レースなどが揃う。OEM生産を考えるなら必ず立ち寄ることになるエリア。
各エリアの市場ごとの詳しい解説(フロア構成、営業時間、回り方)は、広州アパレル市場エリア別ガイドにまとめている。
→ 広州アパレル市場エリア別ガイド【沙河・十三行・白馬周辺・中大】
杭州 – デザイン重視の女性服拠点
杭州は「杭派女装」と呼ばれるデザイン性の高い女性服の本拠地。四季青服装市場を中心とした市場群が広州に次ぐ規模を持つ。
広州との一番の違いはデザインの独自性だ。四季青商圏の風尚国際は2024年に「全国オリジナル服装示範市場」に認定されており、オリジナルデザイナーブランドが4,000以上集結している。広州が「安くて数が多い」なら、杭州は「デザインで勝負する」市場と言える。
注目すべきは、四季青の一部市場が2023年にライブ配信を全面禁止したこと。卸売顧客を保護するための判断で、ライブ配信が卸売の仕組みを壊すという危機感がある。逆に言えば、杭州は卸売市場としての本来の機能を守ろうとしている。
価格帯は広州より高め。単価を抑えたいなら広州、デザインにこだわるなら杭州。
深圳 – 高級オリジナルブランドの拠点
「高級女性服は深圳を見よ、深圳の女性服は南油を見よ」と言われるほどの地位を確立している。南油服装市場は深圳南油第一工業区、第二工業区、天安南油工業区の3エリアで構成され、オリジナルデザイナーブランドの集積地として全国から注目されている。
南油の特殊性は、オンラインに商品を出さない店が多いこと。ECモールでは見つからない商品が、現地に行けば手に入る。つまり競合と差別化できる仕入れ先になりうる。
ただし価格帯は高い。中心価格帯は180〜400元で、月200万円規模の仕入れでも点数は限られる。量を求める人には向かない。他と被らない独自ブランドを探しているなら、ここが第一候補になる。
義烏 – 世界最大の日用雑貨市場
常設ブース約6万軒、170万種類以上の商品を扱う世界最大の日用雑貨卸売市場。1軒に3分かけて回ると1年半かかると言われる規模だ。
義烏国際商貿城・篁園市場・賓王市場の3つの大きな市場と、その周辺の専門街で構成されている。扱う商品は家電、玩具、化粧品、文房具、アクセサリー、革製品、家具など多岐にわたる。衣料品も扱ってはいるが、あくまで「あらゆる雑貨の中の一部」という位置づけで、アパレル専門ではない。
アパレルの仕入れが目的なら、義烏よりも広州か杭州の方が選択肢は多い。ただし、衣料品と合わせて雑貨・アクセサリーも仕入れたいなら義烏は効率がいい。
東莞・虎門 – かつての女性服名産地
東莞市虎門鎮はかつて中国の女性服のリーダーと呼ばれた場所で、富民服装城と黄河時装城が二大市場だった。周辺に1,000以上の縫製工場があり、生産と卸売が一体になった産地型の市場として機能していた。Tシャツの品質と価格には定評がある。
しかし近年は広州の市場に押されて影響力が低下している。富民服装城では広州の沙河や十三行から仕入れた商品を転売する店の比率が増えているという指摘もある。虎門の産業基盤と工場ネットワーク自体はまだ残っているが、わざわざ虎門まで足を運ぶ優先度は、広州・杭州・深圳より下がっている。
生地の調達や、Tシャツなど特定アイテムの工場直接取引を考えるなら、まだ選択肢に入る。
北京 – 市場は事実上なくなった
北京にはかつて、動物園エリア(通称「動批」)・大紅門・雅宝路という三大アパレル卸売市場があった。動物園エリアだけで1万3千店舗、従業員3万人超、1日の来場者は10万人を超える中国北方最大の集散地だった。
しかし、北京市の都市再編政策(「首都機能にそぐわない業態の移転」)により、2013年から段階的に閉鎖が始まった。2017年には最大市場の世紀天楽が閉市し、同年11月には最後に残っていた東鼎も閉鎖。30年の歴史に幕を下ろした。
大紅門も同様に45の卸売市場が移転を完了している。跡地は金融科技センターや公園に生まれ変わった。
アパレル卸売の業態は主に河北省廊坊市に移転したが、新しい拠点がかつての「動批」のような集客力を持つには至っていない。現在の北京は、アパレルの卸売仕入れを目的に行く場所ではない。
その他の主要都市
武漢(湖北省) — 漢正街服装卸売市場が全国的に有名で、12の専門市場を擁する。とりわけ綿入りコートの産地として知られ、長江以北で流通する綿入りコートの多くは武漢産。
常熟(江蘇省) — 「中国メンズセンター」の異名を持つ。常熟招商城を中心に35の専門卸売市場があり、メンズ・レディース・海外向け生産品・ストリートブランドまで幅広い。海外向け生産の残り品がコストパフォーマンス良く手に入ることで知られている。
青島・即墨(山東省) — 即墨服装卸売市場は中国でも有名な大規模市場。リーズナブルな価格帯が特徴。拡張工事が進行中。
上海 — 七浦路服装卸売市場は、杭州四季青に次ぐ華東エリアの大型市場。低〜中価格帯が中心で、韓国風の商品が多い。
瀋陽(遼寧省) — 五愛市場は東北最大の老舗服装市場。全国で最も営業開始時間が早いことで知られる。
株洲(湖南省) — 芦淞服装市場群は中南地区最大。複数の市場ビルで構成されている。
石獅(福建省) — 18の服装卸売街、6つの商業城、8つの専門市場、8,000以上の店舗を持つ。子供服の三大産地のひとつ。
鄭州(河南省) — 銀基商貿城が最大規模。女性用パンツでは全国的に強い地位を持つ。
成都(四川省) — 西南地区の服装中心。九龍広場(トレンド服)、明都大厦(カジュアル服)、万紫商城(フォーマル服)など用途別に市場が分かれている。
どの都市・どの市場を選ぶべきか
仕入れ規模が月50万円以下で、まずは小ロットで試したいなら、広州の沙河か十三行が最も手軽。5枚からでも応じてくれる店が多い。
月50万〜200万円で、品質と価格のバランスを取りたいなら、広州の白馬・紅棉エリアか、杭州の四季青が合う。デザイン性を重視するなら杭州、コストを抑えたいなら広州。
月200万円以上で、他と差別化できる商品を探しているなら、深圳南油を選択肢に入れるべきだ。価格は高いが、オンラインには出ないオリジナルデザインの商品が手に入る。
レディース全般なら広州か杭州。メンズなら広州駅周辺の站西か常熟。子供服なら石獅か佛山。生地・副資材なら広州の中大エリア一択。
現地に行く時間がない場合は、広州に拠点を持つ買付代行を使うのが現実的な選択肢になる。広州ならすべての価格帯とジャンルをカバーできるので、「まずは広州から」という考え方で問題ない。
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代行業者の選び方や費用の仕組みについては、別の記事で詳しく解説している。
→ 中国買付代行の選び方と費用相場
中国からの仕入れ自体が初めてなら、まず全体の流れを把握してから動いた方がいい。
→ 中国輸入の始め方
「実際にいくらかかるのか」を具体的な数字で知りたいなら、ランディングコストの計算例をまとめたページがある。関税・消費税まで含めた総コストの出し方を、電卓ひとつで追える形で書いている。
→ 中国仕入れの費用と利益率シミュレーション
広州市場からの仕入れに興味がある方は、まずはお気軽にご相談ください。具体的に決まっていない段階でも構いません。
