中国アパレルの検品で見るべきポイント – 弾く基準、許容する基準
検品と聞くと、チェックリストを片手に、1枚1枚を何分もかけて隅々まで確認する作業を想像するかもしれない。
現実は違う。経験を積んだ検品者の手は速い。最初の1枚にはじっくり時間をかけて基準を頭に入れ、2枚目以降は全体を満遍なく見て、違和感があれば手が止まる。1枚に何分もかけない。長年の経験で「何かおかしい」が目に入って気づく。言語化できるチェックリストの先に、感覚としての品質基準がある。
この記事では、中国仕入れアパレルの検品で実際に何を見ているのか、どこで弾いてどこを許容するのかを、できる限り言語化する。
アパレル検品の基本:何を見ているか
経験者が商品を手に取ったとき、確認しているのは大きく5つの領域だ。
1. 外観の全体印象。 まず商品を広げて全体を見る。色味、シルエット、パーツの位置関係が「正常」に見えるかどうか。サンプルや前回のロットと比べて、何か違和感がないか。この段階で「何かおかしい」と感じたものは、具体的にどこがおかしいかを特定する。
2. 縫製。 縫い目のライン、縫い代の幅、糸の色、端の処理。糸の色は意外と見落とされる。黒い生地が白い糸で縫製されている、という間違いは実際に起きる。これは見た目の好みではなく明確な不良だ。一方、裏側の縫製が雑に見えても、縫い目が止まっていて解れなければ機能的には問題ない。検品で重要なのは「きれいかどうか」ではなく「機能しているかどうか」だ。
3. 生地の状態。 汚れ、染み、傷、生地の破れ、穴。生地の厚みが前回と明らかに変わっていないか。同じロット内で一部だけ発色が異なるケースもある。
4. サイズ。 タグに表記されたサイズと、実際の寸法が大きくずれていないか。全品をメジャーで測る全品検品は現実的ではないため、ピックアップ検品(抜き取り検査)で数枚を実測し、残りは外観で判断する。
5. タグ。 ブランドタグ、洗濯表示タグ、サイズタグが正しい位置に正しく付いているか。タグの向きが上下逆、サイズ表記が実物と不一致、といったミスは珍しくない。
6. パッケージ。 OPP袋(透明フィルムの個包装袋)に正しいサイズの商品が入っているか。MサイズのOPPにLサイズが入っていた、というミスは実際に起きる。
よくある不良の種類
中国仕入れのアパレルで発生しやすい不良を、頻度の高い順に整理する。
汚れ・染み。 最も頻度が高い。生産過程で付着する機械油、糊、マーキングペンの跡。洗えば落ちるものもあるが、糊が付着していると洗えないケースがある。
縫製不良。 ほつれ、糸飛び、縫い目の蛇行。縫い糸の色が指定と違う。
サイズ違い。 タグの表記と実寸が合わない。Lサイズの実寸がMサイズだった、という事例はOEM(自社オリジナル製造)工場でも発生する。
色違い・発色不良。 モニターで見た色と実物が違う(これは不良というより構造的なギャップだ)。同じロット内で一部だけ発色が異なる。
タグの間違い。 サイズタグが間違っている、ブランドタグが逆さまに付いている。
パーツの取り違え。 本体と襟の色を間違えて組み合わせた、左右で素材が異なる、といった組み立てミス。
パッケージの間違い。MサイズのOPP袋にLサイズの商品が入っている、色違いの商品が混入している。検品後の袋詰め工程で起きるため、検品自体では見つけられない。最終出荷前の目視確認で拾うしかない。
異臭。 機械油の匂い、染料の匂い、革素材の匂い。保管環境によっては倉庫の匂いが移っていることもある。
「弾く」と「許容する」のライン
検品で最も大切なのは、弾く基準を事前に決めておくことだ。すべてを完璧に求めると、コストが跳ね上がるか、仕入れ自体ができなくなる。
弾くもの
パーツが歪んでいる。 襟の位置が明らかにずれている、ポケットが斜めについている、左右の袖の長さが違う、構造的な組み立てミスは弾く。修正できないし、着用した際に見た目に影響する。
色がサンプルと違いすぎる。 持ち帰ったサンプルと並べて明らかに違う色は弾く。「若干の差」ではなく「明らかに別の色」が基準だ。
サイズが規格外。 昇華プリント(生地にインクを染み込ませる印刷方式)なら身幅±10〜20mmは業界標準の許容範囲だが、それを超える場合は弾く。通常の綿製品でも、許容寸法は事前に確認しておく必要がある。
洗っても落ちない汚れ。 糊が付着した汚れ、染料の染みなど、洗浄では除去できない汚れがある商品は弾く。
許容するもの
縫い代が汚い。 裏側の縫製が雑に見えても、縫い目が止まっていて解れなければ許容する。むしろ、何度も縫ってある場合は頑丈だ。
縫い糸が飛び出ている。 ハサミで切れば済む。見た目は雑でも、縫製の強度には影響しない。
タグがわずかに曲がっている。 数ミリの傾きは、広州の市場レベルでは許容範囲。消費者が気にするレベルかどうかで判断する。
色味の微差。 デバイスのモニターの違いで見え方が変わる程度の差は許容する。気になるなら、次回からサンプルを事前に空輸する。
この線引きは、販売する価格帯と顧客層によって変わる。高価格帯で販売するなら基準は厳しくなるし、手頃な価格帯なら多少の許容は必要だ。自社の基準を明文化して、バイヤーと共有しておくことが、検品のブレを減らす最も確実な方法だ。
検品の前に止める商品 – 偽ブランドと知財リスク
弾く・許容する以前に、「そもそも買わない」という判断がある。
広州の市場には、ブランドロゴの入ったコピー品や、有名ブランドに酷似したデザインの商品が普通に並んでいる。安くて見栄えが良いから、初心者ほど手を出したくなる。だが、偽ブランド品の輸入は商標権の侵害にあたり、日本の税関で没収される。没収で済めばまだいい。輸入者として法的な責任を問われるリスクを負うのは、販売者であるあなた自身だ。
だから、経験のあるバイヤーは買付の段階で止める。「この商品はロゴが入っているから扱えません」「このデザインは有名ブランドに似すぎているので、リスクがあります」。検品台に乗る前に、現地の目で弾く。これが最初の検品だ。
判断が分かれるのは、ロゴはないがデザインが酷似している商品だ。どこまでが「トレンドの共有」で、どこからが「模倣」か。線引きは商品ごとに違う。少なくとも、ブランドのロゴ・タグ・刻印が入ったものは一律アウト、というラインだけは絶対に守る必要がある。市場の店頭で「売れそうだ」と思った商品ほど、一度立ち止まって確認してほしい。
検品より時間がかかるのは、検品の後だ
検品そのものは、経験者なら速い。広げて、全体を見て、違和感がなければ次へ。手が止まるのは違和感があったときだけだ。
ただし、検品だけでは商品は出荷できない。検品の後に続く加工作業のほうが、時間がかかる。
検品後の加工作業: ブランドネームの付け替え、洗濯ネームの付け替え、下げ札の取り付け、畳み、間に紙や厚紙を入れる、OPP袋に入れる、シールを貼る。この一連の作業が、1枚あたりにかかる時間の大部分を占める。
広州の買付代行では、検品・ネーム付け替え・下げ札・OPP包装をまとめて1枚あたり3元(約70円)のセット価格で提供するケースがある。この価格には検品だけでなく、出荷準備までの全工程が含まれている。
検品は「チェックリスト」ではなく「基準の共有」
検品を外注する場合、チェックリストを渡しても、それだけでは品質は安定しない。
チェックリストに「縫製を確認」と書いても、何をもって合格とするかは人によって違う。重要なのは、サンプルの現物を基準として共有することだ。「このサンプルの品質が合格ライン。これより明らかに劣るものは弾いてほしい」という具体的な基準があれば、検品者は判断しやすい。
前回のロットのサンプルを1枚手元に残しておく。新しいロットが届いたら、サンプルと並べて比較する。この運用だけで、品質のばらつきは大幅に抑えられる。チェックリストの項目を100個に増やすより、基準となるサンプル1枚を共有するほうが、検品の精度は上がる。
よくある質問
Q. 全品検品とピックアップ検品、どちらがいいですか?
コストとリスクのバランスで判断します。全品検品はコストが高くなりますが、不良品の漏れが少ない。ピックアップ検品はコストを抑えられますが、抜き取りで問題がなくても全体に不良が混在している可能性は残ります。高単価商品やブランド品は全品検品、低単価の大量仕入れはピックアップ検品が一般的です。
Q. 不良品率はどのくらいを想定すべきですか?
中国アパレルの不良率は仕入れルートと検品体制によって大きく変わります。取引先の選別をしていない一般的な仕入れで3〜5%程度、取引実績のある店舗を選んで全数検品を行う体制であれば1.5%未満に収まります。最初の仕入れでは必ず全品検品を行い、自分の仕入れ先の実態を把握してください。
Q. 検品で弾いた商品はどうなりますか?
現地のバイヤーが店舗や工場に返品交渉を行います。明確な瑕疵があれば交換や返品が認められますが、「期待との差」レベルでは通りません。修正可能な不良(糸の飛び出し、軽微な汚れなど)は検品時に処理し、出荷可能な状態にすることもあります。
この記事を書いた人: 広州市場での買付代行実績15年のスタッフが在籍する中国トレーディングサポートが、検品の実務と判断基準を現場の視点から解説しました。


