小ロット高回転という仕入れ方 – 広州市場だからできるテスト販売サイクル
中国仕入れの最小ロットと聞いて、「最低100枚」「300枚から」という数字が浮かぶ人は多い。OEM(自社オリジナル製造)ならそれに近い(実際の条件は工場との交渉次第だ)。
ただ、広州の卸売市場は違う。「5枚から」仕入れられるという情報は検索すれば出てくるが、実はもう一段階、柔軟な仕組みがある。
「合計5枚」という柔軟さ
広州市場の多くの店舗では、1色1サイズあたり5枚が最小単位になっている。ただし、現地のバイヤー(買付代行)がその店舗と関係を築いている場合、1色1サイズ5枚ではなく、合計で5枚という買い方ができるケースがある。
この違いは大きい。
合計5枚でよいなら、たとえば10種類の服を各サイズ1枚ずつ、サンプルとして購入できる。XS・S・M・L・XLの5サイズを10デザインで50枚。店舗にとっても、まとまった数の購入は見込み客としてありがたい。テスト仕入れでありながら、店舗との関係構築にもなる。
この50枚を日本に送り、現地に行かなかった社員も含めて実物を見ながら吟味する。写真や動画では伝わらない生地の手触り、色の出方、縫製の丁寧さを、チーム全員が確認できる。その上で「この3デザインを追加発注する」という判断を下せる。
感覚ではなく実物で判断する。これがテスト仕入れの本質だ。
サンプルは航空便で先行輸送する
テスト仕入れのサンプルを船便で送ると、日本に届くまで14〜21日かかる。この待ち時間がもったいないなら、航空便を使う手がある。
コストは船便より高いが、数十枚のサンプルであれば重量も限られている。広州への視察は3泊4日で来る人も多い。往復の移動で前後2日が消えるから、市場を歩けるのは実質2日。最終日も、無理をすれば朝だけ市場に寄れる程度だ。その短い滞在中にバイヤーを通じて航空便の手配をしておけば、自分が日本に帰ったころにサンプルが届く。 帰国翌週にはチーム全員で商品を広げて検討会ができる。
通関に際して多少の書類対応が必要になることもあるが、経験のあるバイヤーであれば手続きを代行してくれる。航空便のサンプル輸送は、テスト仕入れのスピードを大きく変える手段だ。
テスト販売→追加発注、「余裕を見て約40日」
サンプルで商品を確認し、追加発注をかけた場合、商品が日本に届くまでの全体リードタイムはどのくらいか。目安を示す。
仕入れ:5〜10日。 バイヤーが市場で商品を集め、追加発注分を店舗に確認し、数量をまとめる期間。人気商品は在庫が変動するため、タイミングによっては代替品を探す時間も含まれる。
ネーム付け替え・検品・梱包:5〜10日。 ブランドネーム、洗濯ネームの付け替え、検品、下げ札の取り付け、OPP包装(透明フィルムの個包装)。数量と加工内容によって前後する。
船便:14〜21日+通関数日。 広州から日本の港までの海上輸送に、通関手続きの所要日数が加わる。
合計すると、追加発注から日本到着まで——現地スタッフの言い方を借りれば——「余裕を見て約40日」がひとつの目安になる。春節前後は工場が2〜4週間止まるため、この時期はさらに延びる。初回のテスト仕入れ(サンプル購入→日本での検討→追加発注の意思決定)を含めると、最初のサイクルは2か月程度を想定しておくのが現実的だ。
2回目以降は、バイヤーとのやり取りもスムーズになり、サイクルは短縮される傾向にある(リピート仕入れの具体的な進め方は別の記事で詳しく解説している)。
小ロットで回す人の特徴
小ロット高回転の仕入れをうまく回しているEC事業者には、いくつかの共通点がある。
実績が出ても大量購入に走らない。 売れた商品があっても、すぐに大ロットを発注するのではなく、追加発注を小分けにして在庫リスクを抑える。同時に、次のリサーチとテスト購入を止めない。ヒット商品に依存しすぎると、そのデザインが市場で出回った瞬間に差別化が崩れる。
リサーチ自体を楽しんでいる。 これは精神論ではなく、運用上の事実だ。アパレルで小ロット高回転を続けるには、市場の動きを常に追う必要がある。広州の市場は商品が3日で入れ替わることもある回転速度だから、見るたびに新しいデザインがある。服が好きな人にとっては、リサーチが苦にならない。趣味の延長線上に仕事がある。
逆に、「仕入れは面倒だから一度にまとめて終わらせたい」というタイプの人には、この運用は向いていない。小ロット高回転は、手間を効率化しているのではなく、手間の種類を変えているのだ。大ロットの在庫リスクを、小ロットのリサーチ頻度に置き換えている。どちらのコストを引き受けるかは、事業者の性格と事業の段階による。
大ロットとの使い分け
小ロットだけで事業を拡大するのは、ある段階で限界が来る。売上が伸びれば、定番商品は大ロットで仕入れてコストを下げたほうが合理的だ(コストの計算方法はこちらの記事にまとめている)。
現実的な運用は、定番品は大ロット、新作のテストは小ロットという二本立てになる。定番品で安定した売上と利益率を確保しつつ、小ロットで次の定番候補を常に探す。広州市場の回転速度があるからこそ、この「探索と安定」の両立が可能になる。
小ロット仕入れは、事業の入口であると同時に、事業が成長した後もリサーチ機能として回り続ける仕組みだ(OEMに至る前の段階的なブランド化についてはこちらの記事で解説している)。
よくある質問
Q. 「合計5枚」で買えるのはどの店舗でもですか?
すべての店舗ではありません。バイヤーが日常的に取引しており、信頼関係がある店舗に限られます。初見の店舗では1色1サイズあたり5枚が基本です。バイヤーの関係構築の深さが、仕入れの柔軟性を左右します。
Q. テスト仕入れの航空便はコストが高くないですか?
船便より単価は高いですが、サンプル50枚程度であれば重量は限られており、コストは許容範囲に収まるケースが多いです。テスト販売の判断を2〜4週間早められることの事業的価値と比較して判断してください。
Q. 追加発注したら同じ商品がまだありますか?
広州市場は商品の回転が速いため、テスト仕入れから時間が空くと同じ商品がなくなっていることがあります。売れ筋の商品であれば在庫が維持されている可能性が高いですが、限定的なデザインは早めの追加発注をおすすめします。


