広州市場でリピート仕入れを続ける方法 – 追加発注・疑似OEM・返品の現実
広州の市場で見つけた商品がECサイトで売れた。追加発注をかけたい。ここからが、中国仕入れの「本番」だ。
テスト販売はゴールではなくスタートラインだ。売れた商品を安定して仕入れ続けられるかどうかが、EC事業の継続性を決める。ただし、広州市場の商品は「いつでも同じものが買える」保証がない。在庫は小さく、回転は速く、染め生地が尽きたら同じ色は二度と出ないかもしれない。
この不確実性とどう付き合うかが、広州仕入れの技術だ。
追加発注の基本:同じお店に聞きに行く
追加発注のプロセスは、拍子抜けするほどシンプルだ。同じお店に行って、同じ商品があるか聞く。 あれば、必要な数量とサイズを伝えて購入する。以上だ。
ただし、広州の市場では商品が数日で入れ替わることがある。前回仕入れた商品がまだ在庫にあるとは限らない。「もう作れない」と言われることも珍しくない。
そのときにバイヤーの力が発揮される。
完全一致ではないが、かなり似た商品を市場の中から探し出す。生地の質感、シルエット、ディテールが近い代替品を見つけたら、日本の購入者に写真を送って確認を入れる。「この商品でいいですか?」と。それで購入に至ることは実際に多い。
ほんの少し違う商品は、広州の市場には必ずと言っていいほど存在する。ポケットの形、ステッチの色、ボタンの素材が微妙に異なるだけで、全体の印象はほぼ同じ。そういう商品を見つけるには、市場を毎週歩いている人間の目が必要だ。1688(アリババグループの中国国内向け卸売サイト)のページをスクロールして同じ商品を探しても見つからないが、市場を歩けば見つかる。WEB購入では不可能な仕事だ。
追加発注で品質が変わるとき
同じ商品を追加発注できたとしても、品質が前回と同じとは限らない。最も多いのが染め生地の問題だ。
どんなに同じ染料・温度・時間で染めても、ロットによって色が変わる。これは染色業界の常識とされている。染め釜の状態、その日の温度や湿度、染料を手作業で配合するときのわずかな差。同じ釜で同時期に染めた生地は同じ色に仕上がるが、釜や日が変われば、染め上がりは微妙に変わる。
だから、前回の仕入れで使われていた染め済みの生地がまだ残っていれば、同じ色の商品が手に入る。残っていなければ、新しく染め直すことになり、色味が変わる可能性がある。
染めた生地がなくなった場合、完全同一の色は諦めたほうがいい。 これは広州の工場の技術が低いからではなく、染色という工程の物理的な制約だ。同じ色に見えることもあるが、何とも言えない。基本的には、染め上がった生地が在庫にある限りは同じ色、在庫が尽きたら別の色と考える。
昇華プリント(生地にインクを染み込ませる印刷方式)の場合は(これは市場買付ではなくOEM(自社オリジナル製造)の話になるが)さらに変動要素が増える。数年後に同じ商品を追加発注する場合、顔料のロットが変わっている可能性がある。同じCMYK(印刷用の色指定方式)値で印刷しても同じ発色になるとは限らない。もはや運の領域だ。データと実物の色の差は、中国仕入れでは避けて通れない問題だ。
返品が通るケースと通らないケース
広州市場での返品対応は、日本国内の商慣習とは大きく異なる。「気に入らないから返品」は基本的に通らない。返品が認められるのは、明らかな瑕疵がある場合に限られる。
返品が通るケース
見本と明らかに縫製が違う。 サンプルで確認した縫製の丁寧さと、納品された商品の縫製があからさまに異なる場合。縫い代の幅が明らかに違う、縫い目が大きく蛇行している、など。
色味が明らかに違う。 WeChatの写真と「若干違う」レベルではなく、「明らかに別の色」と判断できるレベル。バイヤーが検品段階で弾くことが多いため、日本に届いてからこの問題が起きることは少ない。
サイズ感がバラバラ。 同じMサイズのはずなのに、通常許容される採寸誤差(1〜2cm程度)を大きく超えて身幅がばらついているなど、商品として成立しない状態。
返品が通らないケース
服の裏側の縫製が汚い。 裏側の見た目が雑でも、縫い目が止まっていて機能的に問題がなければ、返品理由にはならない。実は、裏側が何度も縫ってあるものは、見た目は汚くても解れにくく頑丈なことが多い。
タグが少しだけ曲がって縫われている。 数ミリの傾きは、広州の市場レベルでは許容範囲だ。
色味がWeChatの写真と若干違う。 デバイスのモニターが違えば色の見え方は変わる。これは当然のことだ。「若干違う」レベルの色差は返品理由にならない。色味が気になるならサンプルを事前に送付してもらうべきで、それを怠った場合は自分の責任だ。
縫い糸が飛び出ている。 ハサミで切ればいい。見た目は雑でも、縫製の強度には影響しない。
返品の判断基準をまとめると、「商品として機能しないレベルの瑕疵」は返品対象、「好みや期待との差」は返品対象外だ。この線引きを事前に理解しておくことが、中国仕入れのストレスを大幅に下げる。
テスト販売から疑似OEMへの移行
広州市場のビジネスモデルは、近年「少量展示→受注後に生産」に大きくシフトしている。ある店のオーナーに聞くと、店頭分として200枚程度は持っていると言っていた。売れれば100枚程度まで減っていることもあるという。昔は数千枚の在庫を抱えるのが一般的だったというから、市場の構えは大きく変わった。店頭に並んでいるのは少量のサンプル在庫であり、まとまった発注があれば工場に増産を指示する。
この構造は、EC事業者にとって疑似OEMへの移行を容易にしている。
疑似OEMとは、市場で売れた商品の製造元に、バイヤーを通じて直接発注をかけることだ。市場の店舗を経由しないぶん中間マージンが削れ、同一工場から同一品質の商品を、継続的に安定して仕入れる体制が整う。完全なOEM(自社デザインの型紙から製造)ではないが、リピート仕入れの不確実性を大きく減らせる。テスト販売→タグ付け替え→疑似OEM→フルOEMという段階的な進め方が、中小EC事業者にとって最も現実的なルートだ。
この移行がスムーズに進むかどうかは、バイヤーが工場を辿れるかどうかにかかっている。市場の店舗は、製造元の情報を簡単には教えない。長い取引関係があるバイヤーだからこそ、店舗オーナーから工場の情報を引き出せる。
ただし、すべての商品で疑似OEMに移行する必要はない。トレンド品は市場からの都度仕入れ、定番品は疑似OEM。この二本立てが、リスクとコストのバランスが最も良い運用になる。
よくある質問
Q. 追加発注したら同じ商品が必ず手に入りますか?
保証はありません。広州市場の商品は回転が速く、売り切れると同じものが再入荷しないこともあります。ただし、バイヤーが店舗に確認し、在庫があれば購入できます。在庫がない場合は、類似商品を探して提案する対応が可能です。
Q. 色が前回と違う場合、返品できますか?
「明らかに別の色」であれば返品交渉が可能です。「若干の色差」は返品理由になりません。色の違いが心配な場合は、追加発注の前にサンプル1枚を航空便で取り寄せることをおすすめします。
Q. 疑似OEMに移行するにはどのくらいの取引実績が必要ですか?
明確な基準はありません。同じ商品の追加発注が複数回続き、安定した売上が確認できた段階が一つの目安です。バイヤーとの信頼関係と、店舗・工場との取引実績の両方が整ってから移行するのが現実的です。
この記事を書いた人: 広州市場での買付代行実績15年のスタッフが在籍する中国トレーディングサポートが、リピート仕入れの実務と疑似OEMへの移行プロセスを解説しました。


