中国仕入れアパレルの品質がばらつく原因 – 写真では分からないリスク
中国から届いた段ボールを開けるとき、少しだけ息を止める瞬間がある。
写真で見たとおりの商品が入っているかもしれないし、まったく別のものが入っているかもしれない。開けてみるまで分からない。中国仕入れのアパレルには、そういう一種のスリルがある。ただ、EC事業を営む者にとって、スリルは利益ではなくリスクだ。
この記事では、中国アパレルの品質がばらつく原因を、10年以上のOEM製造と広州市場での取引経験をもとに解説する。WEBで検索すれば品質トラブルの情報はいくらでも出てくるが、ここでは「なぜ起きるのか」の構造と、「どこまでが許容範囲か」の現実的な線引きに踏み込む。
オンライン仕入れの写真は「最も良い状態」を映している
1688やタオバオの商品写真は、商品のベストコンディションを撮影したものだ。当然といえば当然だが、この「当然」が品質のギャップを生む。
色合いのズレは、光源の違いで生まれる。同じ商品でも、蛍光灯の下で撮るかLEDの下で撮るかで写真の色は変わる。肉眼でも屋内と屋外では違った色に見えるのは普通だ。撮る側は商品が最も映える光と角度を選ぶし、同じ写真でもモニターが変われば色の見え方も変わる。このように「画面の色」と「手元に届く色」は同じにならない。
写真と実物で、チャックやポケットの位置が違うこともある。「使いやすいように」と工場が勝手に仕様を変更して送ってくる。使いやすくなっているかもしれないが、他のアイテムとセットで販売する予定で寸法を合わせていた場合、その「親切」が致命傷になる。しかも、「前の仕様に戻してほしい」と頼むと、「前のものはもうない」と言われることがある。実際にはできるのかもしれないが、ロット数が少なければ面倒だから断られる。
網目状のメッシュ素材は、熱で縮んだものが届いたこともある。写真の商品とサイズが明らかに違う。中国仕入れの品質リスクとは、こういう「写真では絶対に分からない差異」の集積だ。
広州市場からの仕入れなら、ここには単純な解決策がある。店頭の展示品が、そのままサンプルだからだ。色や質感を日本にいるチームとすり合わせる必要があるなら、写真を送り合って議論するのではなく、現物を1枚購入して日本へ送るほうが確実で、結果的に安くつく。写真10枚より現物1枚。これは現場の実感として断言できる。
OEM工場でさえ、こういうことが起こる
「市場から買い付ける商品は品質が不安定でも、OEM(自社オリジナル製造)なら安心だろう」と思うかもしれない。残念ながら、そうとも限らない。
10年以上付き合いのあるOEM工場で、実際に起きたことを列挙する。
サイズがまるごとワンサイズ下で製造された。 Lサイズを注文したのに、メジャーで実寸を測るとMサイズ。MはSサイズの寸法だった。実寸を計ったうえでの工場からの連絡は「これで送ってもいいですか?」だった。もちろん無理だと伝え、再作成を依頼した。10年以上の付き合いがある工場でさえ、ダメもとで聞いてくる。これが中国のものづくりだ。
MサイズのOPP袋にLサイズの商品が入っていた。 お客様からの指摘で発覚した。検品の網をすり抜けた例だ。
ロゴの大きさが指定と違った。 イラストレーターでの入稿時にサイズ指定を間違えたことが原因だった。これは発注側のミスだが、工場側もデータどおりに作っただけで、違和感を指摘してはくれない。
縫い目が粗い、あるいは曲がっている。 工場の人員が入れ替わるタイミングで頻発する。縫製ラインが真っすぐな商品が欲しければ、それなりに高級な縫製工場を選ぶ必要がある。ただし、裏側の縫製が多少粗くても、何重にも縫ってある場合はむしろ強度が高いこともある。見た目と実用性は別の話だ。
2色のパーツを組み違えた商品を送ってきた。 本体と襟の色が黄色と緑の2パターンあり、一緒に印刷して裁断した後、組み立てのときに混ざった。黄色の本体に緑の襟がついている商品が納品された。
輸送業者を勝手に変えて、荷物がカンボジアに行った。 中国の工場側の送料を安く上げるために、使ったことのない輸送業者を勝手に手配した結果だ。書類も適当で、税関でも足止めを食らい、納期ぎりぎりになった。
これらはすべて、日本語でやりとりしている工場で起きたことだ。長年の付き合いがあっても、担当が変わったタイミングで品質は揺らぐ。
そして、これはどこか特定の工場の話ではない。中国仕入れをしている同業者と話すと、「似ているけれど少し安いチャックに差し替えられていた」「気づかなかったので、そのまま何ロットも通っていた」という話を繰り返し聞く。言い方は厳しいが、中国の工場には、放っておくと少しずつ部材の質を下げて利益率を高めようとする傾向がある。だから、定期的に「品質は維持していますか」「部材は変えていませんか」と、人間関係を壊さない程度に確認を続ける。これが中国でものづくりをする側の作法だと思っている。
昇華プリントの色は、印刷データどおりには出ない
OEMで昇華プリント(生地にインクを染み込ませる印刷方式)を使う場合、色のズレはもう一段、根が深くなる。
イラストレーターで作ったCMYK(印刷用の色指定方式)の印刷データと、実際に生地へ印刷された完成品の色は、特に青系・紫系で違いが出やすい。ズレの主因はモニター表示ではなく、データを実際のインクと生地で再現する印刷工程にある。
これは、データを自分で作らない買付の人にも無関係ではない。実物の商品を撮った写真からの買付なら、色の認識差は小さい。一方、まだ生産前の商品を企画段階のデザイン画像だけで購入すると、届いた色が想定と違うことがある。データ画像の段階で買い付ければ、ライバルより早く商品を出せる。その誘惑は分かる。それでも、そこはぐっと堪えて、完成済みのサンプルを写真か現物で確認してからの仕入れをおすすめする。
テストプリントは、頼めば工場はやってくれる。費用と時間がかかるだけだ。色が勝負の商品なら、その費用は保険として安い。省略してズレが出たなら、それは省略を判断した発注側、自分自身の責任になる。
なお、昇華プリントの真っ黒のジャージは生地が伸びると白く見えるという特性がある。これは昇華プリントの技術的な制約であって不良ではないが、知らないと「色が薄い」とクレームになる。
検品で「弾く」もの
サイズ違い、染み・汚れ、糸の色間違い、タグの取り違えなど、検品で弾く典型的な不良は検品で見るべきポイントで詳しく解説している。OEM特有の問題として、発色が指定と違うケースがある。モニターだけで色を確認し、印刷工程でズレが生じるパターンだ。
- サイズ違い(実寸が注文と合わない)
- 染みや汚れ(洗えば落ちる場合でも、糊が付着していると洗えない)
- 黒い生地に白い糸で縫製(表から目立つ)
- サイズタグの間違い
- 型紙の取り違え
- 縫製があまりにも雑でジグザグになっている
- 発色が指定と違う(モニターだけで確認し、光の加減で色味が変わるケース)
弾く割合の肌感覚としては、OEMで0.5〜1%程度、広州市場からの仕入れで1.5%未満というのが目安になる。数字だけ見れば小さいが、1,000枚仕入れれば10〜15枚は弾くことになる。全品検品すればコストが膨れ上がるため、通常はピックアップ検品(抜き取り検査)が現実的な運用になる。
経験のあるバイヤーであれば、検品やOPP梱包のときに修正できる不良は修正してくれる。ただし修正不可能なものは再作成の依頼をかけることになり、そのぶん納期は伸びる。
品質を重視する人にとって大事なのは、広州という市場の特性を理解しているバイヤーを選ぶことだ。沙河のような安価なエリアの商品と、韓国向けの高めのブランドを扱うエリアの商品では、同じ「広州の商品」でも品質帯がまるで違う。激安にはそれなりの理由がある。高めの店舗には高いだけの裏付けがある。その違いを指摘できるバイヤーかどうかが、品質管理の出発点になる。
品質リスクとどう付き合うか
品質が不安定なら中国仕入れはやめたほうがいいのか。そうではない。日本の工場でも、数を作れば不良品は出る。中国のリスクは、不良品の発生そのものよりも、「不良品を不良品と認識しない文化」にある。OEM工場がサイズ違いの商品を「これで送っていいですか?」と聞いてくるのは、その象徴だ。
だから必要なのは、現地で品質を判断できる人間の目だ。
1688の画面で商品を選び、代行業者に発注し、届いた商品を開封して初めて品質を確認する、というフローでは品質リスクをコントロールする手段がない。現地のバイヤーが市場で商品を手に取り、生地の厚み、縫製の状態、染めの均一さを確認してから出荷する。そのプロセスが入るかどうかで、段ボールを開けるときの心拍数が変わる。
中国仕入れの品質トラブルは「起きるか起きないか」ではなく「起きたときにどう対処するか」の問題だ。信頼できる検品体制があるかどうかが、EC事業の安定運営を左右する。
よくある質問
Q. OEMなら品質は安定しますか?
OEMは仕様を指定できるぶん市場仕入れよりコントロールしやすいですが、万全ではありません。10年以上の取引がある工場でもサイズ違い・縫製不良・部材変更は起きます。定期的な品質確認と検品の仕組みが不可欠です。
Q. 不良品の割合はどのくらいですか?
OEMで0.5〜1%程度、広州市場からの買付で1.5%未満が経験上の目安です。ただし、仕入れ先の品質帯やバイヤーの目利き、検品レベルで大きく変わります。全品検品はコスト的に難しいため、ピックアップ検品が一般的です。
Q. 写真と実物の色が違うのは避けられないのですか?
原因は2つに分かれます。市場仕入れ・1688仕入れの場合、ズレの主因は光源の違いです。撮影時の照明が蛍光灯かLEDかで写真の色は変わりますし、同じ写真でもモニターが変われば見え方が変わります。色や質感が重要な商品は展示品を現物サンプルとして購入し、日本へ送って確認するのが確実です。OEM・昇華プリントの場合は、CMYKの印刷データと実物の発色差が原因で、特に青系・紫系がズレやすくなります。テストプリント(費用と日数が追加でかかります)を行えばズレ幅を最小化できます。


